愛知県美術館「アイチのチカラ!」

愛知県美術館の「アイチのチカラ!」展に行ってきました。戦後から現代まで、愛知にゆかりのある作家がとりあげられた展覧会です。
巨匠から新進気鋭の作家まで、さらに油絵、日本画、彫刻、版画と、幅広く見ることができ、とてもお得感がありました。安藤正子さんなど新収蔵品のお披露目もあり。
私は特に版画の作品に好みのものが多くありました。いつもはあまり版画に注目しないのですが、今回は展示されている作品全部好きと言っても良いくらいです。
特に鈴木幹二さんの「樹」(正確には樹の後に数字がふられているのですがメモし忘れてしまいました…)という作品が良く。白い背景に、木の枝と幹だけが黒く這わされた画面は深々としています。まるで雪の降り積もるなかに仰向けになって見上げた光景のようです。その場に居るようです。
井上靖の「あすなろ物語」ご存知でしょうか。主人公の少年が憧れていた女性が雪の中で、他の男性と心中してしまうというエピソードがあるのですが(ちょっとうろ覚えです)、この作品の前に立ってひどく思い出されました。彼女が死に向かって見た景色は、こんなだったのではないだろうかと。寒々しく、恐ろしく、悪寒がし、満たされ、幸せ。
こんな綺麗な景色を、命を失わずに見られるとはなんという幸せ。

展覧会は来年2月まで行われています。是非どうぞ。